今日の昼食は家族皆んなで丸源ラーメンに行ってきました。6人掛けの広いテーブルでメニューも豊富です。季節限定品やお子様へのおもちゃプレゼントなど、楽しい雰囲気で家族連れの客が多い国道沿いの郊外型ラーメン店です。
また当社オフィスの近くにはラーメン二郎があります。こちらは駅近型で席はカウンターのみ。家族連れを見かけたことはありません。客は会話もせずに黙々とラーメンを食べるのみ。店先には常に長い行列ができています。
考えてみるに自店の特徴を思いっきり打ち出して店舗運営をしているラーメン業界にこそ経営のヒントがたくさんあるように思われます。
最近では当社も競合プレゼンの機会が増えています。強者揃いの競合他社と肩を並べる中、どのようにしたら当社を選んで頂けるのか、他社との大きな違いは何なのかという独自の特徴付けが最も重要となります。いわゆる「強み」とか「差別化」というものです。
先日参加しました総会の記念講演で「3つの差別化軸」というお話を拝聴する機会に恵まれました。
講演内容の一部を要約しますと、
経営戦略の基本は「強みを活かして戦う」ことです。
「強み・差別化」というと無数にあるように思えますが、
実は大別すると3つしかないということです。
3つの差別化軸とは
1)手軽軸:他社よりも「早い、安い、便利」で差別化する
2)商品軸:他社よりも「高品質、最新技術」で差別化する
3)密着軸:他社よりも「個別ニーズに応える」ことで差別化する
この3つの差別化軸、例えば美容室を例に挙げると
以下のようになります。
早い、安い、駅近で便利な場所にあります。そうしないと回転率が上がらないからです。
手軽軸の場合は「大量生産・大量販売」を志向した設備投資を行い、人事・組織は効率重視の中央集権型になります。
この軸のポイントは、まさにお手軽「利便性」なので、早くて安くするためにマニュアルなどを活用して、いかに効率良く回転率を上げるかが重要となります。また、薄利多売のため価格競争に巻き込まれやすいという反面もあります。
主な例
駅前の10分1,000円カット。便利な立地と短時間で手軽にカットができるため、忙しい時でも立ち寄りやすく、低価格で質の良いサービスが受けられます。
商品軸の場合は、「高品質・最新技術」を志向した設備投資を行い、人事・組織は開発部門が自由に動けるようにします。
この軸のポイントは、最新のものを生み出すための研究環境や腕を磨くための資金や時間が必要になります。 また、価格以外の価値に重きを置いているため、ブランド力で選ばれるため価格競争にはなりにくいといえます。
主な例
青山や表参道のカリスマ美容師個人サロンなど。ファッションの情報発信拠点である青山や表参道のカリスマ美容師の店。ファッショナブルで腕も確かですが価格も高いです。
また少し変わった例として、「ラーメン二郎」もまさに商品軸中心といえます。連日行列ができていても並ぶのは、店舗ならではのラーメンに魅了するだけの、換えが効かないここでしか食べられない「ブランド力」があるからではないでしょうか。店内では他店にはない暗黙の了解が守られているのも、「ラーメン二郎ブランド」が周知されているからです。
密着軸の場合は、「お客様ごとの個別生産」を志向し、人事・組織は顧客に最も近い組織(通常は営業や接客部門)に力を持たせます。
この軸のポイントは、「顧客対応力」です。「自分のことをわかってくれている」と感じるような、お客さま一人ひとりに合わせた対応力が必要です。自分だけのためにオーダーメイドしてくれたりカスタマイズできるというところに値段以上の価値を提供するというものです。顧客のニーズを汲み取る洞察力や機転を働かせるようにするための人材スキルの育成が必要になります。
密着軸は、一朝一夕で成果が出るわけではありません。顧客との信頼関係を築き、深い関係を構築するには、時間と労力が必要です。しかし、長期的な視点で顧客満足度を高め、安定した経営を実現したい美容室にとって、非常に有効な戦略と言えるでしょう。
主な例
保育士常駐のサロンなどが密着型例として挙げられます。子育て中のママ向けのメニュー開発など密着したサービスを提供することで、家族で長く通えるサロンとして選ばれるよう顧客との距離を縮めます。
かかりつけ医のいる病院など。長い付き合いを構築することで癖を理解してくれ、小さな悩みや問題を解消するため、二人三脚で対応してくれます。
スポーツバーも密着型の例として、挙げられます。熱狂的なファンと一緒に試合を観戦・共有できるほか、応援しているチームについて語り尽くせたり、働く店員さんも同じくファンであることが多いことから馴染みのある料理提供や共通の話題で盛り上がれるなど、「憩いの場」「行きつけの場所」となっています。
以上が「3つの差別化軸」ですが、いざ自社で行おうとした時、注意して取り入れなければなりません。
例えば自社の事業を戦略的には「商品軸」として経営していたにも関わらず、軸がぶれて「手軽軸」の手法を行ってしまうというようなことです。
例えば青山にあるカリスマ美容師の店が駅前で半額券をばら撒いたりするようなことです。売上が落ちた時などに陥りやすい経営の落とし穴といえます。
いつもの常連客が接客を受けている時に、隣の席に座った初めての客が駅前でもらった「半額券」を店員に渡しているのを見てしまったなら、どうなるかは想像するに難しくないと思います。
遠く越谷からわざわざ青山まで出向いてきたにも関わらず、しかも他店と比べて決して安くはない料金を何年も支払っているのです。不満になるのは当然のことでしょう。
この美容室のお客様は「料金の安さ」で来ている客層ではないからです。そこへ安さで引き寄せた客は常連にはならないばかりか、他の顧客に悪い印象を与えてしまいます。それよりも「お得意様ご来店1周年目の記念品プレゼント」の方が軸がぶれずに良いサービスではないでしょうか。
さて、では当社の「強み」とは一体どういったものになるのでしょう。そして「3つの差別化軸」ではどれに当てはまるのでしょうか。それは次の機会に話したいと思います。
この記事を書いたスタッフ
SUICH 代表
SUZUKI
グラフィックデザイナー及びクリエイティブディレクターとして広告・プロモーションの経験を積み、2011年、スイッチデザイン事務所を創業。2018年、株式会社スイッチを設立。
デザインが生む「解決する力」の可能性を信念に、ブランドを構築するという意識をもって仕事に取り組んでいます。