先日、WEBに全く詳しくない製造業の友人と私の仕事について「ホームページを作るのが仕事だ」と話をしていた時に、こんな質問をされました。
「広告クリックしたら文章がズラッと並んでいて、あれなんなの?デザインとかないし、なんか素人が作ったみたいだけど‥」
確かに数年前くらいから、InstagramやYouTube広告を見ていて、「あれ?このサイト、なんだか手作り感があるな」「ちょっとダサくないか?」と感じるものが出てきたのは事実です。
一見なぜかと聞かれたら「制作費が無くて自社で作ったのかな」と考える人も多いのではないでしょうか。制作会社に発注すれば綺麗で洗練されたデザインのページやバナーを作ってもらえる。お金を払った分、その対価として得られるのは当然ですよね。
ですが実は今、そんな「一見洗練されていない」デザインのサイトやLPが、綺麗に作り込まれたサイトよりも成果を出すケースも中には存在しています。かといって「じゃあうちも闇雲に手作り感や泥臭さを売りにしたデザインにすればいいんだ!」ということではありません。
そこで今回は、
これらをWEB制作一筋、業界で務めて13年のディレクター兼現役デザイナーの私が解説したいと思います。この記事を見て、ぜひその戦略的理由と、制作を発注するにはどんな考えを持った制作会社が適切かを読み取っていただきたいです。
この記事を書いたスタッフ
SUICH WEBデザイナー
KURIBAYASHI
2021年10月に2人目のWEBデザイナーとして入社。
前職は同様にHP制作会社で、デザイナーながらWEBならではの戦略やSEO対策などに意欲的で、のべ500件ほど、幅広いクライアント様を担当致しました。特に集客特化であるランディングページを得意としています。この現象の背景には、AIの急速な進化があります。ChatGPTやCanva、Figmaなどのツールの登場により、デザインの知識がない人でも、参考デザインを提示したり、元から用意されたテンプレートを使うことで、それなりにプロっぽく見えるサイトを簡単に作れるようになりました。
Adobe社の調査(2025年)によれば、中小企業経営者やマーケターの47%が、すでにマーケティングや宣伝活動にChatGPTを活用していると回答しています(※1)。このようにAIによる業務支援が一般的になったことで、プロ並みのクリエイティブを制作するハードルは劇的に下がったと言えるでしょう。
47% of marketers and business owners use ChatGPT to market or promote their business
しかし、ここに大きな問題があります。2026年2月現在、WEB市場には「見た目は綺麗なのに全く反応がないサイト」が溢れかえっているのです。
実は、Googleの研究でも興味深いデータがあります。コンバージョン(成約や問い合わせ)に至ったページは、そうでないページよりも画像の数が38%も少なかったというのです(※2)。
We found sessions that converted users had 38% fewer images
つまり、綺麗な画像をたくさん並べたからといって成果が出るわけではないのです。なぜこのようなことが起きるのでしょうか?
答えは、ユーザー心理にあります。整いすぎたデザインは、ユーザーに「実体がない」「テンプレート的」「広告的で信用できない」という警戒心を抱かせてしまうのです。
これは心理学でいう「不気味の谷」現象に似ています。ロボットが人間に近づきすぎると逆に不気味に感じるように、デザインが完璧すぎると、ユーザーは「作り物感」を敏感に察知してしまいます。
POINT
特にAI生成が当たり前になった今、人々の目は確実に肥えています。「ああ、これもAIで作ったんだろうな」と一瞬で見抜かれ、信頼を得られないのです。
ここで、友人が目にした「文章がズラッと並んだデザイン」の正体についてお伝えします。これらはマーケティング業界では主に2つの手法に分類されます。
SNSなどでよく見られる、ブログやニュース記事のような構成のページです。あえて広告らしさを消し、個人の体験談や取材記事のような速報感やリアルさを演出することで、ユーザーの警戒心を解く狙いがあります。
DRM(ダイレクトレスポンスマーケティング=お客様の反応を直接引き出すマーケティング手法)という手法で多用される、文字中心の長いページです。過度な装飾を省くことで、ユーザーを説得のための文章に集中させ、深い没入感を生み出します。
POINT
これらに共通するのは、見せることよりも読ませることに特化しているという点です。
ここで重要になるのが、見ると読むという行為の根本的な違いです。
綺麗な画像や動く仕掛けは確かに目を引きます。しかし、それは一瞬「見る」だけで終わってしまいます。一方、文字主体のサイトや、あえてレイアウトを着飾らない泥臭いデザインは、ニュースサイトのように「読むことが当たり前」と思わせることができるのです。
人間には「バナー・ブラインドネス」と呼ばれる習性があります。これは、広告のように見える綺麗に装飾された要素を無意識に無視してしまうという現象です。
米国の調査機関が行った共同調査(2013年)では、消費者は一般的なディスプレイ広告(綺麗なバナー広告)に比べて、記事形式の広告を53%も高い頻度で視認していることが判明しました(※3)。
さらに同調査では、記事形式の広告は一般的な画像広告と比較して購買意欲が18%向上するという結果も出ています。
Consumers looked at native ads 53% more frequently than display ads
これは、ユーザーが綺麗な広告をただ眺めて終わるのではなく、自らの頭で情報を処理し、自分で自分を納得させている状態を意味します。
人は一方的に売り込まれることを嫌いますが、自ら読み進めて納得した情報には強い信頼を置きます。あえて文章を中心とすることで、ユーザーは「広告を見せられている」という受け身の姿勢から、「自ら情報を読み解く」という能動的な姿勢に変わります。
POINT
つまり、派手な見た目で無理に興味を引こうとするよりも、文章をしっかり読ませて本人が心から納得する状況を作った方が、結果として確実な注文や問い合わせに繋がるということです。
泥臭いデザインが採用される理由として、もう一つ知っていただきたいデータがあります。
ある比較テストで、ウェブサイトのトップ画像に「フリー素材の綺麗な笑顔の女性モデル」を使った場合と、「少しあか抜けない実在の創業者の写真」を使った場合で、どちらが無料相談の申し込みにつながるかを検証しました。
結果として、実在の創業者の顔写真を使用した方が、申し込み率が大幅に高くなったのです。
別の調査でも、買い物客の53%は、プロが撮影した写真よりも一般ユーザーの投稿写真の方が、購入の決断において自信を持てると回答しています(※4)。
53% of shoppers say UGC makes them more confident than professional photography
ユーザーは、プロによって完璧に演出された綺麗な写真よりも、本当に実在する人物の泥臭い姿に説得力と信頼を感じます。そこに「売り手都合の嘘がない」と判断するからです。
POINT
ネット上の口コミや一般の人の体験談に信頼感があるのも、これと同じ理由です。
ここまで解説してきた泥臭いデザインは、信頼を得るだけでなく、そもそも画面を見ている人の目を止めるための戦略としても強力に機能します。
スーパーマーケットの棚を想像してください。10社が同じような華やかなパッケージで「美味しさ」を競っている中、1つだけ装飾のない文字ばかりのパッケージが混じっていたらその異物感からつい目を向けてしまいませんか?
これは心理学で「フォン・レストルフ効果(孤立効果)」として知られる現象です。1933年にドイツの心理学者ヘドヴィグ・フォン・レストルフが発見したこの効果は、複数の類似したものの中に1つだけ異なる特徴を持つものがあると、そのユニークなものが記憶に残りやすく、注目を集めやすいというものです(※5)。
The von Restorff effect, also known as the “isolation effect”, predicts that when multiple homogeneous stimuli are presented, the stimulus that differs from the rest is more likely to be remembered.
現代の消費者は、スマホやパソコンで日々大量の洗練された綺麗な広告を浴びています。そのような状況下では、綺麗で整った広告は背景と同化してしまい、ユーザーの視界から消えてしまいます。
だからこそ、あえて逆のやり方が活きるのです。
同じような綺麗な広告が並ぶ画面の中で、あえて素人感のある写真や文字中心の泥臭いデザインを投下します。周囲の広告が美しく整っているからこそ、この泥臭さが「孤立効果」を引き起こし、ユーザーが画面をスクロールする手を強制的に止める仕掛けになります。
泥臭いデザインで異物として目を引き → そのまま記事を読むという行動へ誘導し → 共感と信頼を獲得する。
これが、綺麗なデザインをしのいで、より多くの人に広告が見られ、確実な注文や問い合わせを生み出す仕組みです。
ここで重要な注意点があります。すべての状況で泥臭いデザインが良いわけではありません。
例えば、ホットペッパービューティーのように「ずらーっと他社比較されることが前提」のサイトでは、状況が全く逆です。
綺麗な写真が当たり前の環境で、素人が撮影したような写真を使えば、プロフェッショナル性に欠けると判断され、他店と比較されやすいがゆえに水準の低い店舗と思われてしまいます。
とあるサロンの事例では、写真だけをプロカメラマンが撮影したものに変更しただけで、予約数が200%アップしました。
POINT
これを踏まえると、綺麗な写真が業界の最低水準であり、それを下回ることは致命的なのです。
また、ホームページとLP(ランディングページ=広告からの着地ページ)でも戦略は異なります。
ホームページは他社とデザインそのものを並べられるような機会は少ないため、ある程度独自性を出しても問題ありません。しかしLPや広告バナーは、文字通り並べて比較される状況で勝負するため、差別化戦略がより重要になります。
つまり、泥臭いか洗練かは、戦略的に選択されるべきものであり、むやみに採用すれば良いというものではないのです。
ここで、制作会社のディレクター兼デザイナーとして、私が最も声を大にして伝えたいことがあります。
私たちプロの仕事は、Photoshopで美しい色を塗ることでも、After Effectsでかっこいいアニメーションを作ることでもありません。
情報を整理し、ユーザーの心理を最適な導線に乗せる「設計図(ワイヤーフレーム)」を作ることこそが本質なのです。
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デザインだけ良くても、中身(コンテンツ)がなければ意味がありません。逆に、中身がしっかりしていても、どこから問い合わせすればいいのかわからなければ、問い合わせは一向に増えません。
Googleの検索の仕組みは、年々情報の質を厳しくチェックするようになっています。最近はAIを使って誰でも簡単に文章を作れるようになったため、ネット上には似たような中身のないページがあふれ、本当に役立つ情報が埋もれやすくなってしまいました。
これを問題視したGoogleは、2024年3月に大規模なルールの変更を行いました。その内容は「クリック目的のコンテンツや、価値を提供しない独自性のない量産コンテンツの表示を減らす方針である」というものです(※6)。
その結果、中身が薄いページや、AIで自動的に作られただけの質の低いページは、検索しても上位に表示されにくく(評価が大幅に下がるように)なりました。
本日、2024 年 3 月のコア アップデートを発表しました。このアップデートは検索の品質向上を目的としています。単にクリックさせるために作られたようなコンテンツはなるべく排除され、ユーザーが有用と感じるコンテンツが多く表示されるようになります。また、新しいスパムに関するポリシーも公開しました。これにより、Google の検索結果に悪影響を及ぼすおそれがある行為により適切に対処できます。
つまり、見た目だけ良くても、中身が伴わなければ検索結果に表示されることすらなくなるのです。
これらを踏まえ、基本に帰りますが、まずは「誰に、何を、どう伝えるか」を今一度考え重要視することが大切です。具体的には以下の4つが挙げられます。
これらが固まって初めて、デザインという器に意味が生まれます。
ここで大きな誤解を解いておく必要があります。
手作り感や泥臭さは、決して素人が適当に作ったものではありません。プロが作るのは、ターゲットに合わせて計算し尽くされた演出としての手作り感です。
たとえば、以下のような要素が緻密に計算されています。
POINT
これらすべてが、ユーザーテストやA/Bテスト(2つのパターンを比較するテスト)のデータに基づいて最適化されています。表面的には素朴に見えても、その裏には緻密な戦略があるのです。
制作会社に依頼するメリットは、まさにこの塩梅を理解していることにあります。
どこまで作り込むべきか、どこをあえてシンプルにすべきか。この判断は、経験と知識がなければできません。そして、制作にどれだけ時間とコストがかかるかを正確に計算できるのも、プロとアマチュアの決定的な差です。
AIや安価なデザイナーに発注すれば、確かにそれなりのものは作れます。しかし、なぜそのデザインなのかという戦略的な説明ができるでしょうか。このターゲットにはこのアプローチが最適という根拠を示せるでしょうか。
POINT
あなたのビジネスには泥臭さが必要なのか、それとも洗練が必要なのか。これを判断できるのがプロなのです。AIに任せてなんとなく綺麗なサイトを作ることは、その他大勢のノイズに埋もれることを意味します。
ユーザーの目もどんどん肥えています。AIで生成されたようなテンプレート感のあるサイトは、一瞬で「ああ、これも広告か」と判断され、離脱されてしまいます。
デザイナーの私がこう言うのはびっくりするかもしれませんが、制作現場で常に意識しているのは装飾は二の次でいいという原則です。
まずワイヤーフレーム(設計図)の段階で、テキストだけでユーザーに価値を伝えられるか。ここで勝負できないなら、どれだけ綺麗なデザインを被せても成果は出ません。
実際、成功しているサイトの多くは、デザインを外してテキストだけ読んでも十分に説得力があります。言葉と設計で勝負できることがこれからのWeb集客の分かれ目になるのです。
これからWebサイトの制作を依頼する際、「綺麗に作ります」「最新のトレンドを取り入れます」という言葉だけでは不十分です。
本当に選ぶべきパートナーは、以下を言語化できる制作会社です。
これらの問いに、データと経験に基づいて答えられるかどうか。それが、プロとアマチュアの決定的な差なのです。
改めて冒頭の友人の質問「広告クリックしたら文章がズラッと並んでいて、あれなんなの?」
これに対し、今までお伝えした点を踏まえて、私はこう答えました。
「あれはね、綺麗すぎるデザインに飽きた人、警戒している人に『本物らしさ』を感じてもらうための、計算された戦略なんだよ。素人が作ったように見えるけど、実はプロが『あえて』そう作ってるんだ」
見た目の美しさに惑わされず、本質的な価値を提供できるパートナーを選んでください。
綺麗すぎるデザインより泥臭いデザインが選ばれる理由とは、ユーザーが求めているのが完璧な作品ではなく、自分の課題を解決してくれる、信頼できる相手だからです。
その信頼を勝ち取るために、私たちは今日も、デザインの前に設計を、装飾の前に言葉を、大切にし続けています。
「うちのサイト、綺麗なんだけど問い合わせが来ないんです」
「逆に、泥臭いデザインで本当に大丈夫なんでしょうか?」
このような疑問やお悩みがあれば、ぜひ一度お話しさせてください。
あなたのビジネスの状況、ターゲットとするお客様、競合の動きを丁寧にヒアリングさせていただいた上で、「本当に成果に繋がる戦略」をご提案します。
制作会社として13年間、数多くのサイトを手掛けてきた経験から言えるのは、正解は一つではないということです。だからこそ、あなたのビジネスに合った答えを、一緒に見つけていきたいと考えています。
まずはお気軽にご相談ください。Webサイトの新規制作はもちろん、「今のサイトをどう改善すればいいか」といったご相談も大歓迎です。