
先日、あるセミナーで当社の経営理念についてお話しする機会をいただきました。
技術やデザインのトレンドは日々変化しますが、私たちが創業以来大切にしているスイッチという会社が何を大切にし、どのような想いで日々の制作に向き合っているのか。
その原点となる講話の内容を、ここに記録します。
この記事を書いたスタッフ
SUICH 代表
SUZUKI
グラフィックデザイナー及びクリエイティブディレクターとして広告・プロモーションの経験を積み、2011年、スイッチデザイン事務所を創業。2018年、株式会社スイッチを設立。
デザインが生む「解決する力」の可能性を信念に、ブランドを構築するという意識をもって仕事に取り組んでいます。
「自分を生かし、社会に良い影響を与える」
一、最も大切である自分を生かしきります。
一、社会に感謝される存在となります。
一、生き生きとした前向き発想のクリエイティブ集団です。
私が27年間勤めたマーケティング会社を退職して独立したのは2011年4月でした。
個人事業としてスイッチデザイン事務所を創業したその年は、3.11の東日本大震災と福島第一原発事故が起きたどん底経済の年でした。
それでもなんとか仕事を軌道に乗せることができ、創業から7年後の2018年4月に法人化し、
株式会社スイッチを設立して社員を雇用しました。
以前勤めていた会社の先輩から
「会社を設立したなら、何のために経営するのかを明確にしなければ、経営がぶれて芯の通った会社にならない。自分は何のために経営するのかを深く問い、その答えを経営理念にするように」と教わりました。
私は、「良い会社をつくろう」「良い経営者になろう」「良い経営環境をつくろう」との考えを基本とする、中小企業家同友会が主催する「経営指針づくりセミナー」に参加し、約半年間に渡り経営指針の成文化に努めました。当初は中小企業家同友会が推奨する経営姿勢「人を生かす経営」についてまだまだ浅い考えでしたが、セミナー受講を重ねるにつれて、「人は他人によって動かされるものではない」「人は他人によって使われるものではない」「人は他人によって変わるものではない」と気付かされました。
いくら他人が人を生かそうと考えても、本人がその気にならなければ何も始まりません。人が変わるのは本人の「やろう」という意思とそれに伴う行動によってのみです。
つまり、「人が自分を生かす」ことを支える経営こそ
私が目指すべき理念だと考えました。
自分を生かすための前提は、「人は変わることができる」ということです。
言い換えれば、人は成長し続け、いくらでも伸びることができるということです。
ただし、人が簡単に変わるわけではありません。
では、どうすれば人は変わることができるのでしょうか。人は①本性、②属性、③習性の三つから成ります。
①本性とは持って生まれた本質的な性質で、親や祖先から受け継いだもので自分では変えられません。
②属性とは生まれ育った環境や条件に由来するもので、これも自分だけで変えるのは難しいです。
残る③習性だけが、自分で変えられる要素です。
習性、つまり習慣によってのみ人は変わることができます。
習慣が人をつくる。悪い習慣を改め、良い習慣を身につけることが大切です。
習慣化のコツは、誰でもできる簡単なことから始め、それを繰り返すことです。
さらに重要なのは「素直な心」を持つことのようです。
松下幸之助氏も「経営者に最も大切な素質は素直な心である」と述べています。
その書には「素直な心の十ヶ条」などが示されていますが、端的にまとめると次のようになります。
素直な心とは、誰に対しても、何事に対しても耳を傾ける心である。
素直な心は学びを吸収する心です。
古人の言葉に「愚者は賢者から学べず、賢者は愚者からも学ぶ」とあります。
では、どうすれば素直な心になれるか。ここでは素直な心を育てる習慣の一つを紹介します。
次の三つの言葉を口癖にすることです。
素直の「す」は、素晴らしいの「す」
素直の「な」は、なるほどの「な」
素直の「お」は、おもしろいの「お」です。
「素晴らしい」「なるほど」「面白い」。
人の話を聞くときに、うなずきながらこれらの言葉で相づちを打つ習慣を続けると、
やがて素直な心が身についているでしょう。
当社の経営理念は「自分を生かし、社会に良い影響を与える」です。
「社員それぞれが自分を生かしきることで、社会に良い影響を与える」
そんな会社をつくろうと考え、熟考の末に出した答えです。
後に知った言葉で言い換えれば「己を尊び、人に及ぼす(尊己及人)」と言えるでしょう。
皆さんは、この世で最も大切なものは何だとお考えでしょうか。
それは「自分」です。
自分を大切にできない人が、他人を大切にすることはできません。では、「自分を大切にする」とは何でしょうか。それは「自分を生かしきる」ことです。
自分を生かし、社会に良い影響を与えるとは、自分の個性を最大限に発揮して世のため人のために働くことです。自分を輝かせることで、周囲を明るく照らし、人々を幸せにする。
それこそが「己を尊び、人に及ぼす」(尊己及人)ということであり、
結果として、それは人との関わりの中で自分を生かし、自分を大切にすることにつながります。
自らが生き生きと自分を生かしきること。
それが最も大切な「自分」を大切にすることであり、その働きにより人から「ありがとう」と感謝されることが、
「自分を活かし、社会に良い影響を与える」という理念の実現です。
自分を生かすには「自分が何者か」を知る必要があります。
自分を知るとは、自分の生い立ちや体質、性格など、
祖先から受け継いだ面も含めた自分のあり方を知ることです。手っ取り早い近道は、自分の親を知ることです。自分を大切にするとは、親を大切にし、祖先を敬うことでもあります。特に両親への恩を忘れず、祖先を敬う心が大切です。
以前勤めていた会社の創業者であり、私の人生の師である大下禮敬師匠のご縁で、
森信三先生の「全一学」を学ぶ機会に恵まれました。森信三先生は次のように遺しています。
「人生二度なし」これ人生における最大最深の心理なり。
この人生というものは、二度と繰り返すことのできないものである。
だから我々は、自分が持って生まれた能力を、ぎりぎりのところまで発揮した上で
棺桶に入るというくらいの意気込みがなくてはいけないと思うのです。
大下師匠のご縁で、鍵山秀三郎先生の講演を拝聴する機会にも恵まれました。
鍵山先生は凡事徹底を説き、掃除に学ぶ活動を通じて「トイレ掃除は心磨き」である
ことを教えてくださいました。
足元の紙屑を拾う。一つ拾えば、世の中がひとつ綺麗になる。
紙屑を捨てる人は紙屑を拾わない。紙屑を拾う人は紙屑を捨てない。
そのちょっとした違い、紙屑一つの積み重ねが、やがて大きな変化につながる。
そうやって、紙屑一つ落ちてない綺麗な世の中になれば、
おそらくはこの世から争い事はなくなるのではないでしょうか。
紙屑一つを拾うという一見小さなことが、実は世界平和につながる大きなことだと思うのです。
鍵山先生は2025年1月2日にお亡くなりになったと報じられました。ご冥福をお祈りします。
最後に、鍵山相談役の講演でのエピソードを紹介して講話を終えます。
月刊『致知』に掲載された記事の一部を引用します。
――それは、
鍵山相談役がある大学でトイレ掃除をした後の
講演での出来事です。
学生が鍵山相談役に質問します。
「掃除のような小さなことにこだわっていては
大きなことができないのではないでしょうか」
そこで鍵山相談役は、その学生に尋ねます。
「あなたは、大勢の人が見ている前で、
道に落ちているタバコ1本の吸い殻を拾うことができますか」
学生は
「恥ずかしいから、とてもできません」
と答えました。
この学生のいう通り、私たちは道に落ちている
タバコの吸い殻一つ拾うのにも、
相当大きな勇気がなければできません。
小さなことでも、それを実行するには
大きな勇気がいります。
鍵山相談役は問答の末、こう答えます。
「私は、この吸い殻や空き缶などをただ拾うことだけが
目的ではなく、日本をゴミひとつない国にしたいと思っています。
これを小さなことだと思いますか」…
やっている行為は小さく見えても、
実は大きな意味がある。
ご清聴ありがとうございました。